近島国際特許事務所 Chikashima & Associates

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コラム - Column

霧中の尾根道

 成長、豊かさ等の「坂の上の一朶の雲」は、疾っくに薄れて飛散し、段々濃くなる霧の中の尾根道を、登り坂か下り坂か解らない状態で歩んでいるようです。空前の円高、新興国への技術移転、それによる製品価格の下落、東日本大震災及びタイの大洪水によるサプライチェーンの破断、原発事故による電力不足、EU発の世界経済の下ぶれ懸念、等の厳しい環境の中で「モノづくり」をし、グローバルに競争しなければなりません。霧中の尾根道を一歩踏み外せば、財政状況の悪い我が国にあっては、ギリシャ、イタリアのような債務危機が待ち構えています。国内産業力が衰えて未来はないと金融市場が判断すると、ある日突然国債を売り浴びせられます。GDPの2倍の債務残高があっても、国債暴落が抑えられている日本の信用は、ひとえに日本の産業力であり、これを支えているのは、日本人の勤勉さと、「摺り合せ」を得意とする日本の技術力です。

 日本の特許出願数は、2001年をピークとして減少に転じ、最近は減少率に拍車がかかり、2010年出願数(34万4598件)は、1987年(昭62年)以前の水準になっており、特許及び実用新案の合計数に至っては、1975(昭50年)以前のレベルまで減少しています。

 特許件数だけが、国内産業力の基準ではありませんが、中国は、急激に出願数を増加しており(2010年、39万1177件)、2015年には、特許、実用新案、意匠合せて、250万件と予測しております。

 日本は、既に人口ボーナス期から人口オーナス期に入っており、生産人口は減り続けます。この中で、日本の産業力を維持し続けるのは、できるだけ多くの人が開発、生産に係わる必要があり、それらの人の意識を開発・改善方向に向かわせ、かつその開発力、改善力を高める必要があります。特許出願及び実用新案登録出願は、多くの人のベクトルを揃え、先行技術との違い(差)を客観的に思考し、それを論理的に説明し、主張することになりますので、開発力、改善力の質も高めます。一人子政策により、人口構成が急激に変化する中国にあって、豊かさを志向する膨大な人口が、開発方向にベクトルを揃え、製品の改善、改良に向うことを考えると恐ろしくもあり、反面日本の現状に危機感を持ちます。

 国民総幸福量(GNH)を唱えるブータン国王夫妻の「さわやかさ」には共感を覚えますが、やはり我が国を支え得るのは、産業力、その基盤である製造業であり、国内であってもグローバルであっても、競争に打ち勝って継続、成長するには、特許等の知的財産が必要です。大量生産、大量消費、大量廃棄、それによる資源浪費、環境破壊を伴う去っての「坂の上の雲」は飛び散りましたが、環境保全、安心・安全、省力・効率等の光(目標)が霧の中に差込んでおり、皆様の研究・開発成果、改善・改良アイディアを、適正に保護して貴社経営資源になるよう、精一杯努力する所存です。また、これにより我が国の産業力を回復、向上して、我が国の発展に寄与することを望むものです(産業報国)。

 「実用新案」は、無審査、事後評価からなる新実用新案に変り、多くの人がビジネスツールから外れた存在として認識しておりますが、依然として、特許を補完して小発明(考案)を保護する制度であり、「摺り合せ(インテグラル型)」を基本として、多くの人が開発、改善に参加する我が国の開発、製造手法にあっては合っているものであり、何よりも財務環境の厳しい中では、高額な審査請求料がセーブできますので、コラムに示す「実用新案」(こちらをクリック)を参考の上、「実用新案登録出願」も検討することをお勧めします。

 貴社が開発・改善した成果を、特許、実用新案、意匠のどれで保護すべきか、どのような権利化が貴社にとって最適かを、出願しない方がよいとの結論を含めて、真摯に検討する所存です。こちらまで、お気軽に御一報を頂きたくお待ちしております。

所長 近島一夫

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